記事 013:煮汁が結ぶもの

記事要約

カワハギの煮つけから始まる食の循環。

魚の旨味は煮汁に「宿替え」し、野菜へと引き継がれ、おむすびとなる。

箸使いの謙虚さ、妻の買い物の知恵、『塩の道』に見る「思いの道」。

すべてが、音に凝縮される。

料理も言葉も、引き継がれることで深まる。

カテゴリー

料理、秋


  • 日本の食文化の中で、私が暮らしの中で触れてきた一場面を綴ります。
    熾火を囲むような穏やかな気持ちで読んでいただければと思います。

1. 買い物と切り返し

妻は魚好き、私は鶏肉好きです。

妻が買い物をするときは、初物の高値に惑わされることなく、値段が落ち着いてから鮮度の良い魚を見極めて買っています。

私が、初物のサンマを食べたいと妻にお願いすると、すかさず「もう少し待てば、もっと大きいのが二尾食べられますよ」と切り返されます。

妻ならではの清々しい買い物姿勢です。

そして、妻は季節に合わせて焼き物や煮つけを食卓に並べてくれます。

お互いの健康を思うと、日々の献立の変化と心遣いには感謝が尽きません。

  • カワハギの煮つけ
  • きゅうりとなすのサラダ
  • しょうゆ豆
  • ハムとチーズ


カワハギの煮つけ(有田焼の丸皿)、きゅうりとなすのサラダ(なずな鉢)、しょうゆ豆(有田焼の小鉢)、ハムとチーズ(ガラスの丸皿)


2. カワハギと箸使い

カワハギは、日本料理において箸使いの練習に最適な魚として知られています。

日本の食文化では、箸を使えることが食事の基本となっています。

さらに、私の周りでは魚を上手に食べられることが重んじられているようです。

そういった中で、食事会などでは私への視線を意識してしまうことがあります。

箸使いとカワハギの相性:

  • 扱いに困る太い骨が少ない
  • 細かい骨も最小限で身離れが良い
    (身離れは、完熟したトマトを収穫する時のように素直さがあります)
  • 腹の部分も食べやすい

よって、箸使いの下手な私にとって、この魚はとても有り難い存在です。

さらに、大きな肝に出会えたときは、その日一日得した気分になります。

私は、あの肝特有の食感と味が好きです。


3. 煮汁の引き継ぎ

魚の煮つけで注意すべき点は、煮る時間の長さです。

長く煮すぎると、魚の身が持つ風味は煮汁へと「宿替え」をしてしまいます。

風味が移った後の魚の身は、どこか味気ないものになります。

まるで、砂糖を入れ忘れたプリンのようです。

  • カワハギの煮つけ
  • 野菜炒め
  • がごめ昆布の酢の物


カワハギの煮つけ(四角い長皿)、野菜炒め(黄色い小鉢)、がごめ昆布の酢の物(有田焼の小鉢)

我が家では、魚を多めに煮る際は一工夫をしています:

  1. 鍋に魚を並べます
  2. 煮立てた出汁を後から注ぎ入れます
  3. 煮る時間は鍋の大きさや魚の量に応じて調整します

この方法なら、魚の旨味を身にしっかりと留めながら、美味しい煮つけに仕上げることができます。

魚の旨味をたっぷりと含んだ煮汁を、妻は決して無駄にしません。

里芋やフキの煮物に、この煮汁を引き継ぎます。

そうすることで、魚の旨味が野菜にも移り、より深い味わいになります。

この煮物は、固めに握った「おむすび」と相性が良いようです。

お米と一緒によく噛むと、魚の旨味と野菜の食感が楽しめるご馳走になります。

  • カワハギの煮つけ
  • 野菜の天ぷら
  • ほうれん草の油炒め


カワハギの煮つけ(四角い長皿)、野菜の天ぷら(楕円鉢)、ほうれん草の油炒め(菊型中鉢)


4. 野菜天ぷらと塩

天ぷらには天つゆも良いものですが、今回私たちは野菜本来の味を楽しむため、パラリと天然塩を振って食べました。

今回の顔ぶれは、人参、いんげん、茄子です。

私たちは揚げたてを味わう一方で、多めに作っておき、翌日の昼食に「野菜天丼」として楽しむこともあります。

続けて天ぷらを作るのは大変な手間ですから、これも妻ならではの工夫です。


5. 塩と思いの道

今回の天ぷらで使用した天然塩について、一冊の本をご紹介します。

宮本常一(著)『塩の道』講談社学術文庫

この本では、日本の山間地における塩に対する切実な思いや保存食の取り扱いについて書かれています。

そして、当時の生活環境の厳しさと塩分摂取量について、基礎的な知識が得られました。

私が特に強く印象に残ったのは、牛や馬を利用した運搬時の野営の様子でした。

まず、私は夜の危機管理のやり方に驚きました。

その行いに、大切な塩を必ず届けることへの強い思いを感じました。

そして、私は「塩の道」とは「思いの道」と受け止めました。

本の後半では、日本ならではの視点が綴られています。

西洋の文化圏の方々にとっても、日本の生活文化を深く知るための新しい発見に満ちているかもしれません。

そこでは、生活の基本的なデザインや農具・道具の扱いにふれています。

さらに、「座る」という生活文化などが詳しく扱われています。

これらを通して、表面的な観察だけでは伺い知ることのできない、日本人の奥深い内面を、読者は知ることができると私には思えました。


6. 今回のまとめ

  • 「てしおなる とおきやまみて むすびはむ」

  • [Téchio narou Tôki yamamité Moussoubi hamou]

  • Thé, Si, Eau, Narre, Tôt, Qui, Yam, Mis, Thé, Muse, Bis, Ah, Mu.

  • 「しおたづな さんとましまし ななとなり」

  • [Chio tadzouna sanneto machimachi nana tonari]

  • Si, Eau, Ta, Dus, Na, Saint, Taux, Ma, Si, Ma, Si, Na, Na, Tôt, Narre, Hi.

  • La clé et la bougie, Paravent se regarde, Encre et gorge.


関連リンク


参考文献

参考文献については、下記リンクをご利用ください。

今回参考にした文献は、料 01 です。


音声データ(音):2025_013_ja01(作業中)

音声データ(朗読):2025_013_ja02(作業中)

Microsoft Clipchamp: Brigitte, VOICEVOX: 四国めたん

記事 終わり

  • 皆様の食卓に小さな発見と懐かしさをお届けできればと思います。