記事 006:からすみ——染み込む時間
記事要約
九月末、神社仏閣を訪ねた帰りの夕食。
かぼちゃのスライス焼き、からすみ、ほうれん草——簡単な料理だが、それぞれに時間が宿る。
炙りからすみにわさびを加えると味が変わる発見。
備前焼が手に馴染むまでの歳月。
ほうれん草を見ると思い出す、幼い頃の母の声「量より時間をかけて噛むこと」。
鳥たちも季節を知り、野菜の旬を選ぶ。
時間をかけて染み込んでいくものについての、静かな記録。
カテゴリー
料理、秋
- 日本の食文化の中で、私が暮らしの中で触れてきた一場面を綴ります。
熾火を囲むような穏やかな気持ちで読んでいただければと思います。
1. 久しぶりのドライブ
- かぼちゃのスライス焼き(オリーブオイル使用)
- からすみ
- ほうれん草の油炒め
九月の終わりごろになると少しは暑さが和らぐかと思いましたが、蝉が日光を避け枝の下側に回り込むほどの暑さです。
空調の効いた車中から車外に出るのには、いまだにかなりの覚悟が必要でした。
暑い時期は、体調を考えて外出は極力控えるようにしています。
そうは言っても、今週に入り天候が落ち着いてきたので、私たちは久しぶりにドライブを楽しみました。
行き先は山口県方面の神社仏閣です。
天気もよく、木組みの複雑さや石灯籠、石塔のノミ仕上げなど色々と見応えがあり、私たちは良い勉強になりました。
ただ、あれこれ見て回るうちに帰宅が遅くなってしまいました。
2. 妻の気遣い
お互い疲れているので、今夜はあまり手をかけない夕食にすることにしました。
さすが妻です。
私たちの帰宅時間を見越して、下準備は終えていたようです。
私は日々のこうした妻の気遣いに、頭の下がる思いです。
「かぼちゃ」と「からすみ」については、以下の記事も合わせてお読みください。
全体の流れがわかりやすくなります。
3. かぼちゃのスライス焼き
スライスの厚みは、その時のかぼちゃの肉質で決めています。
オーブンから香ばしい香りが台所に満ち始めた時が頃合いです。
あとは余熱で落ち着かせ、オリーブオイルがなじむのを待つだけです。
柔らかすぎず、硬すぎずが大事だと思います。
4. からすみの誘惑に負けて
前回の食事では、私たちは購入分の半分を食べました。
妻と相談して、残りの半分は二回に分けて食べることにしました。
ところが、美味しさの誘惑に負けてしまい、今回で最後となりました。
そして、今回は薄切りと炙りにして食べました。
5. わさびが決め手
炙りからすみの湯漬けは、まずお茶碗の半分ほどまで、身をほぐしながら食べます。
それから、お米とからすみが程よく混ざり合った頃合いを見計らって、おろしたわさびをひとつまみ加えます。
この味の変化は、私にとって初めての経験でした。
炙りで消えなかった独特の風味がわさびの辛味で和らぎ、まったく違う味の世界が広がりました。
私は一つの器の中で、二つの味を楽しむことができました。
6. ごま油の香り
今回の食事で、私たちは「からすみ」や「かぼちゃ」とともに、ほうれん草も食べました。
妻が事前に茹でて冷蔵庫にしまっていたので、あとは炒めるだけです。
私は鍋肌からあがるごま油の香りを嗅ぐと、とてもお腹が空いてきます。
この香りひとつで、私は今日も無事に帰りつけたと思えるのです。
7. 器と根付け
奥の方で伏せている備前焼の器は、初めて備前市伊部(いんべ)を訪ねた時に購入したものです。
最初の頃は手触りがとても「カサカサ」としていましたが、この頃は「角(かど)」が取れて、私にとって扱いやすくなりました。
私は、椿油が程よく馴染んだ「胡桃の根付け」を愛用しています。
やっと、この根付けと同じように、私の手の内にいつまでも居てほしいと思えるまでになりました。
備前焼は使い込むほどに手に馴染んできます。
そんなお付き合いが、私の楽しみのひとつです。
今では、からすみの色よりさらに深みを帯びています。
8. カサカサ感
通常の備前焼の感触は、土の持つ「ザラザラ」感と思われます。
この器に限っては、私の受け取り方が少し異なります。
和紙に水が染みるように、手の水分を吸い取ろうとする感触の方が勝っていました。
よって、「カサカサ」という言葉を選びました。
そして、「角」とは物理的な感触だけでなく、器と私との時間の歩みも含むと思っています。
9. ほうれん草
私がほうれん草と聞くと、まず思い出すのは、テレビの前に釘付けになって見ていたアニメの名場面です。
今思うと、私はかなり思い込んでいたようです。
幼い頃の刺激は、私にとってなかなか抜けにくいようです。
当時の私は、少しでも身体が丈夫になりたくて、ほうれん草料理を母にねだっていました。
その度に、量より時間をかけて噛むことのほうが大事と諭されました。
あれからだいぶ時間が経ち、私はやっと母の言葉の意味がわかるようになりました。
10. 鳥たちは美食家
私は、ほうれん草のおひたしや油炒め、寒い時期は野菜スープが大好きです。
私が近所の畑を散歩を兼ねて四季を通して観察してみると、面白いことに気づきました。
私の観察によると、鳥たちも季節の野菜を好んでいるようです。
夏野菜にはカラス、冬野菜にはヒヨドリ、種を蒔けばハトが現れます。
野菜が一番美味しくなる頃合いで、ついばんでいるようです。
そして、トラクターで土を耕した後をサギがついて回って、虫を食べています。
カラスは、ご近所が袋掛けしている枇杷の袋をとても丁寧に破って、美味しい実だけをもぎ取って安全なところで食べています。
困ったことに、カラスは我が家のガレージの屋根で食事を始めてしまいます。
種などの残骸を見るのは心穏やかではありませんが、私はカラスの仕返しが怖いので、見て見ぬふりをしています。
11. ほうれん草の栽培体験
私は、かつてアニメの影響でほうれん草は栄養素が豊富で筋肉が立派になる野菜だと思い込んでいました。
調べてみると、たしかにビタミンやミネラルなどを含む野菜であると理解できました。
そして、ほうれん草は本来は冬場の野菜でしたが、需要に合わせて品種改良や栽培環境の工夫により、夏場の栽培も盛んになったと知りました。
私は知ったことは試したくなる性格です。
ちょうど家庭菜園に空きができたので、ほうれん草を栽培することにしました。
種には日本種と西洋種があるそうですが、今回私は病気と暑さに強い種(西洋種)を購入し栽培しました。
今回のほうれん草(西洋種)は、虫に食べられる前の間引き菜としてかなりの量が収穫できました。
次回は、約三百年ほど前から栽培されていて茎が赤くなる日本種に挑戦です。
12. 今回のまとめ
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「うでだめし しおのかんまん ははのこえ」
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[Oudé daméshisshio no kanman haha no koé]
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Eût, Des, Dam, Mes, Si, Sel, Eau, Nos, Qu'en, Mans, Ah, Ah, Nos, Coque, Est.
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L’horizon au bord de l’ongle — le ciel qui s’infuse.
関連リンク
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かぼちゃ
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からすみ
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この記事の他言語版を読む:
参考文献
参考文献については、下記リンクをご利用ください。
今回参考にいたしました文献は、料 01、料 02、料 05 です。
Microsoft Clipchamp: Brigitte, VOICEVOX: 四国めたん
記事 終わり
- 皆様の食卓に小さな発見と懐かしさをお届けできればと思います。


